反変ベクトルの共変微分
「時空と重力(藤井保憲著)」を元に, 共変微分の式を導出してみる.
x 座標系から x' 座標系への変換を考える.
それぞれの計量を , とする.
x 座標系でのベクトル場では, どの位置にあってもベクトルは定数で表されるものとし, それを とする.
x' 座標系でのそれは である.
今,
より
となって, 元の座標系で定数であるベクトルも, 変換先の座標系ではその偏微分は 0 とならない.
さて, これが
に等しいことを証明したい.
というより, の線形結合で表したときに, それらの係数を接続係数と呼ぶことにしようという魂胆なのである.
である.
本にあったのと計算のやり方というか順序というか, ちょっと違う.
あと, 本では X 座標系から x 座標系への変換だった.
ともあれ, これで式を簡単に表すことができるようになった.
定数ベクトルではない一般のベクトルに対しては
となる.
x' 座標系から x 座標系への変換ならば
である.
したがって, 少し計算すれば分かるはずなのだが, 偏微分の結果はテンソルとはならない.
しかし, 偏微分の定義をちょっと変えて共変微分というものをつくり, その結果はテンソルにしたいし, 定数ベクトルを共変微分すると 0 になるようにしたい.
そのためには, 偏微分から の項を引いてやればよいのである(証明略).
というわけで 共変微分を次で定義する.
ここで, は の略である.
ここまでの考え方の問題は, 接続係数 の定義の中に x' 座標が入っているところである.
本来, 接続係数は他の座標とは関係なしに定まるべきものだからだ.
この点, 「相対性理論(内山龍雄著)」ではベクトルの「平行移動」の概念が満たすべき事柄から接続係数を導いている.
その際, ベクトルの大きさが平行移動に対して不変であるべきという要請を使っている.
対して, 「時空と重力(藤井保憲著)」では, 上の計算の中にあるように接続係数を定義した上で, ベクトルの大きさが平行移動に対して不変であることを性質として導いている.
定義と性質は実は同値であるということが数学の世界ではままあるが, この接続係数とやらも同値な定義がいくつか存在するようだ.