共変ベクトルの名前の由来
基底変換が次の一次変換によって表されるとする.
このとき
について
これが
に等しく, , が基底なので
したがって
ゆえに
よって
, とおくと
すなわち
これは共変ベクトルの変換則そのものである.
つまり, 基底変換が一次変換であるときの基底と同じ変換則にしたがうことから共変ベクトルの名が付いたのである.
アインシュタイン方程式
であったので, 両辺に をかけて
… (1)
また,
… (2)
… (3)
… (4)
と定義する.
ビアンキの恒等式より
両辺に をかけると, 計量は の中に入れることができたから
添字を入れ替えると一部符号が変わって(この変換規則はまだ記事を書いていない)
(各項に (1) を用いた)
(第 1 項と第 2 項に (2) を用いた)
両辺に をかけると
(第 1 項に (3), 第 2 項に (4) を用いた)
ここで
((1) より)
添字を入れ替えて
((1) より)
((2) より)
((4) より)
したがって
(クロネッカーのデルタを の中に入れることができることの証明が必要か)
両辺に をかけ, と定義すると
注意
… (2)
と定義したが, 同時に
… (2)'
と定義してしまうと不合理である.
何故ならば (2)' より
であるが, (2) より
となるから
したがって
となってしまう.
計量をかけて添字の上げ下げをする際には添字の順序に気を配る必要がある.
共変ベクトルの共変微分
反変ベクトルの共変微分は
で定義された.
この定義の必然性がよく分からないのは以前と変わらないのだが, これを元にして共変ベクトルの共変微分を定義する.
一般のテンソルに対する共変微分について, 次の 2 条件を満たすことを要請する.
(i) がスカラーなら
(ii) 2 個の任意のテンソル , に対して
(i) のスカラーは定数という意味ではなく, 座標変換をしても値を変えないというものである.
(ii) はライプニッツの法則 (積の偏微分の法則) が成り立つようにしたいということである.
であり, (i) より
であるが, はスカラーだったので, (ii) より
すなわち
ゆえに
, はすべての数をわたるから, 添字を変えて
は任意の自然数の値をとり得るので, 数学的帰納法により
と, 定義すればよいことが分かる.
ビアンキの恒等式
ビアンキの恒等式をヤコビの恒等式を使って証明するやり方のメモ.
復習.
… (1)
… (2)
これらより
(1) より
したがって
(2) より
ここで
… (3)
という量を計算すると, 上式の 1 行目の第 1 項と 2 行目のすべての項が打ち消し合って消える.
また, 3 行目の第 3 項と 4 行目の第 2 項は, いずれかの と を交換すると, それぞれ と を入れ替えた関係になるので, これらも (3) においては打ち消し合って消える.
残った式を展開すると, で と を入れ替えた式を表すものとして
(3)
(1 行目を展開し, 2 行目の第 1 項と 3 行目の第 1 項で を に置き換えた.)
このうち, 1 行目の第 2 項と 2 行目の第 1 項, 1 行目の第 4 項と 3 行目の第 1 項は, それぞれ と を入れ替えた関係なので, 打ち消し合って消える.
結局,
つまり
… (4)
ところで
であったから,
… (5)
(4) から (5) を引いて
これを を省略して
… (6)
と表すことにする.
, , をサイクリックに入れ替えて
… (7)
… (8)
(6), (7), (8) を辺々足すと
, は任意であるから,
おしまい!
この記事を書き上げるのに数時間を要しました.
0 は 0 に移る, 計量条件, ビアンキの第二恒等式
局所直交座標系においては
が成り立っている.
(要証明)
添字が上に上がっても同様.
したがって, あるテンソル があって, その各項がこれらを因数としてもつとき, となる.
また, テンソルの変換性により, あるテンソル がある座標系において 0 ならば, それはどの座標系においても 0 である.
以上により, 各項が計量や接続係数を因数としてもつテンソルは, どの座標系においても 0 である.
この事実を使うと, 計量条件が簡単に導かれる.
終わり.
楽勝.
ビアンキの第二恒等式も導いておく.
であるから, 4 階のテンソルの共変微分の定義より
この第 1 項は
したがって,
(接続係数を因数にもつ項) … (1)
となる.
, , をサイクリックに入れ替えると
(接続係数を因数にもつ項) … (2)
(接続係数を因数にもつ項) … (3)
(1), (2), (3) を足し合わせて
… (4)
をつくると, 接続係数を因数にもつ項だけが残るが, (4) はテンソルであるので, 結局 0 である.
…と言いたかったのだが, テンソルになる保証がないとこれは駄目である.
あらあら.
局所直交座標系においては (4) の各項は 0 であるから, (4) は 0 となり, また, テンソルの共変微分について成り立つ式はどの座標系においても成り立つということを仮定すると, 結局, (4) はどの座標系においても 0 ということになる.
以上により
これをビアンキの第二恒等式という.
テンソルの共変微分と計量条件と他
前回, テンソルの共変微分はベクトルの共変微分から導かれるのかどうなのか分からないと書いたが, 導かれることが分かった.
例えば, 共変ベクトル , に対して
という量をつくってみると,
となるから, は 2 階の共変テンソルである.
(厳密には となることの証明が必要だと思う.)
さて, 共変ベクトルの共変微分は次のように定義されていた.
また, ライプニッツの法則は, まだ証明していないが, 成り立つものとして話を進める.
以上のことから, 2 階の共変テンソルの共変微分を導いてみるぞ.
できました.
実はこのことを使うと計量条件も簡単に導けるのであった.
も 2 階の共変テンソルであるから
簡単だった!
ついでに, 計量条件から導かれる簡単だけど有用なこと.
を任意のテンソルとして
(計量条件を使った)
つまり,
ということで, 計量は共変微分の内外に自由に出し入れができるのである.